世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか 4/5

  例えば、諸君が野原を歩いていて一輪の美しい花の咲いているのを見たとする。
  見ると、それは菫の花だと解る。なんだ、菫の花か、と思った瞬間に、諸君は花の形も色も見るのを止めるでしょう。
  諸君は心の中でおしゃべりをしたのです。菫の花という言葉が、諸君の心の内に這入って来れば、諸君は、もう眼を閉じるのです。それほど、黙って物を見るという事は難しい事です。菫の花だと解るという事は、花の姿や色の美しい感じを言葉で置き換えてしまうことです。
  言葉の邪魔の這入らぬ花の美しい感じを、そのまま、持ち続け、花を黙って見続けていれば、花は諸君に、かって見たこともなかった様な美しさを、それこそ限りなく明かすでしょう。

小林秀雄 「美を求める心」

  承前の内容です。すばらしいフレーズを紹介していただきました。
  昔読んだ「わかったつもり」の主張、つまり、「言葉の背景にある、スキーマ(言葉に付随する概念、既成概念)、コンテクスト(文脈)に注意を払え」に私はとても共感を覚えていますが、冒頭の文章もよく似た考えかただと思いました。「わかったつもり」では、相手の言葉に付随する概念に注意しなさい、あるいは自分が発する言葉を相手がどう受けとるか注意しなさい、という教えが述べられていますが、冒頭の言葉は、自分自身がもつ言葉のスキーマ(既成概念)、コンテクストに縛られることがないよう注意しなさい、と言うこと。自分自身の言葉に自分の考えが縛られることを戒めています。
 ‎
  現代は即断即決、スビーディな判断が必要になっています。しかしながら、他人の考えに対する評価、自分のアイデアに対する判断など、スピードを求めるあまり底の浅いものになってはいないでしょうか?人間の判断よりAIの判断が正しいとされる研究事例も数多くあるようです。
  スピーディーに判断できる人は自分の直感を信じて判断します。直感は潜在意識、ダニエル・カーネマンの言う「システム1」の働き、意識に上る前に自動的に情報選別してしまうシステムです。直感の拠り所とする材料が少なかったり、歪んでいたりしたら判断がおかしなものになってしまうのも当たり前です。
 ‎そこを補うのが「アート」に対する鋭い感覚、ということなんですね。


 

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世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか 3/5

 高度な意思決定の能力は、はるかに直感的・感性的なものであり、
絵画や音楽を「美しいと感じる」のと同じように、
私たちは意思決定している。

   傍証や研究成果を示しながら上の言葉の意味を解説しています。ひとつは「ソマティック・マーカー仮説」。感受性や情動を司る脳の部位が損なわれると、論理的思考は損なわれていないにもかかわらず、意思決定できなくなる、という事実に基づき、情報に接した時に呼び起こされるいろいろな感情が意思決定に重要な役割を担っているという仮説です。
   もうひとつは、「リーダーシップとセルフアウェアネスの高い相関」。ソマティクマーカーすなわち自分自身が発する信号を正しく検知できる「セルフアウェアネス」の能力とリーダーシップの相関がコーンフェリーヘイグループの研究で示されているそうです。

   その流れの中で、マッキンゼーやハーバードなどの「マインドフルネス」教育の強化の話が述べられています。
   ‎「マインドフルネス」。過去や未来に意識を奪われることなく、この瞬間の自分の内部で起きていることに、深く注意をはらうこと、と説明されていますが、これはまさしく禅で云う「平常心是道」、あるいは「内観」。「考えない練習」「平常心のレッスン」に書かれていることとほぼ同じだと思います。私は単に心の在り方を示すものと思っていたのですが、意思決定の能力にもつながる話だったんですね。

   要するにこの本では、「マインドフルネス」の訓練を通じて一切の既成概念、執着を取り払うことで本当の「美」を見いだすことができる、と主張しています。そして、「美」を見いだす力は「高度な意思決定」の能力につながっていると、平たく言えばそういうことなんですね。


 

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世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか 2/5

 外観もテクノロジーも簡単にコピーすることが可能ですが、
世界観とストーリーは決してコピーすることができないのです。

  Appleと、そのデザインを真似しているといわれているSamsungやHuaweiなどとの比較が一番わかりやすいですね。Samsung, HuaweiがどれだけAppleのデザインを真似ようと、コアなiphoneファンはファンであり続けます。この本では、「アップル製品を使っている私」「アップルを使っているあの人は、そのような人だ」という文言で、世界観やストーリーの重要性を説いています。そういうことを説いたブランディング戦略の本は数多くあります。

  じゃあどうやったらそういう世界観を築ける人になれるのか?それがこの本の主題、新しいところだと思います。
  この本では、経営における意思決定のクオリティを決めるものとして、アート、サイエンス、クラフトの3つの要素に分けています。
  サイエンスとクラフトは客観的で説得力があり周りを説得しやすい。でも「世界観」や「ストーリー」を作る能力は「アート」。「アート」は客観的な議論に馴染まないが、だからといってないがしろにしてはいけない、と。そういうことなんですね。


 

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世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか 1/5

 正解を出せる人が少なかった時代には、「正解」には高い値札がつけられましたが、
これほどまでに「論理思考」などの「正解を出す技術」が普遍化した結果、
 いまや「正解」は量販店で特売される安物、
つまり「コモディティ」に成り下がってしまったわけです。

  近頃は目が悪くなり、本を読むスピード、集中力がなくなってきました。さらには新しく感心することも少なくなってきました。歳とって感受性が低くなったからなのか、それとも二番煎じ三番煎じの内容が多くなったのかよくわかりませんが。

  今回の本、これは面白いと感じたので久々にアップします。ずっと心に引っ掛かっていたこと、この本を見てかなり整理できました。

  心に引っ掛かっていたこととはすなわち、‎各種自己啓発書、ビジネス書の内容はごもっともなんだけど、こんな定石に沿った考え方で世の中渡っていけるの?という疑問です。一般に広く知れわたり陳腐化した内容ばかり、と思うからビジネス書に興味を失ったのかもしれません。
 ‎ この本、私の疑問がもっともなものであることを、「正解のコモディティ化」という言葉でストレートに示してくれました。上のフレーズの「正解」という言葉は私の感じた「定石」と同じ意味だと思います。
 ‎ コモディティ化に対抗する考え方をまた新たに切り開いていかないといけません。この本にはその考え方の一つが示されているなかなかの良書だと思います。


 

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せいめいのはなし 2/3

  君ね、自分の中に自分を探してもダメだよ

    自分探しをしがちな若い人むけの教訓ですが、動的平衡の考え方から、こんなすごい教訓が出てくるんだ。なんて面白い!

 「細胞がなんの細胞になるかは、あらかじめ内部的に決められてはいない。その前後左右上下の細胞との関係性によってはじめて何になるか決まる」らしいのです。
 前後左右上下の細胞とコミュニケーションが取れなくなって、空気が読めなくなった細胞は、誰かがうまく誘導してやれば、何にでもなりうる「ES細胞」として有用だけど、自分では何にもなれずに永遠に増え続けるしかないのです。
 そして、「君はもともと肝臓の細胞だったんだろ、思い出しなさいよ」という声に耳をかさず、自分の殻に閉じこもって自分探しを続けて無限に増殖し元の姿に戻れなくなった細胞があります。

それが「がん細胞」

メタファーとしてとてもよくできた、そしてとても怖い話です。


 

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ビジネス書の気に入ったフレーズをデスクトップに貼り付けて自己啓発に努めています。その内容をこのブログにてアップします。

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